2013年3月13日水曜日

2262の詩

キーを回す。
グローランプが消えてからエンジンを始動させる。

「ブロロン!」
心地良い振動が身体を震わす。

ピストンが下がり、シリンダーに空気が入る。ノズルから軽油が噴射される。圧縮された空気と軽油が一気に燃え、ピストンを押し下げる。


いつも「オヤジ」と一緒だった。

人々が寝静まる中、「オヤジ」に起こされ、名古屋に向かう。

時には「オヤジ」のヘタクソな唄を聞かされた。時には「オヤジ」の居眠り運転で左耳を大怪我させられた。牛丼を食べながら運転していた時は、さすがに危ないからやめてくれと言った。

帰り道はいつも、背中に沢山の花たちを載せられた。花瓶が倒れて割れた時は、オレのせいにさせられた。オレが悪い訳じゃないのに。

一年間で3万km。炎天下の時も、マイナス15度の時も、ずっと「オヤジ」と一緒だった。ついに13万kmを超えた。色々な事があったけど、「オヤジ」はオレを大事にしてくれた。

「オヤジ」の弟分の「ちくりん」の運転で背中に大怪我をさせられて、「オヤジ」はオレをお払い箱にする決心をしたらしい。

もう、花を運べなくなるのは悲しいけど、やがて来る新人にその役を譲ることにする。



「オヤジ」は最後に言ってくれた。

「今まで沢山の花と、私の命を安全に運んでくれてありがとう」






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